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2006年 09月 11日
『脳の探求』 ―― 感情・記憶・思考・欲望の仕組み
スーザン・グリーンフィールド 新井康允 中野恵津子 無名舎 P268 私たちは毎日、昼食は何にするか、どの生命保険が有利かといったことを意識的に判断して生きている。しかし、実際にコントロールしているのはいったい誰なのか。あなたか、それともあなたの潜在意識なのか? もちろん、自分では意識的に体を動かそうと判断していると思うだろうが、ほんとうにそうなのか、確かめられるのか? 前述のベンジャミン・リベットはそれを確かめようとした。 リベットは、私たちが動こうと決めたときに脳の中で何が起きるのかを探った。意識的な決定が先か、無意識的な運動の実行が先か。最近、ロンドン大学のユニバーシティ・カレッジの生理学者パトリック・ハガードが、リベットのこの実験を再現した。実験はとても簡単だった。パトリックの実験動物になった私が言うのだからまちがいない。私の頭蓋に取りつけられた電極が、脳の運動皮質の電気活動を監視する。運動皮質は運動の生成に関与する皮質の一部である。私がなすべきことは、いつでも自分の好きなときにボタンを押して、それを押したいと思った時間を正確に告げることだった。 リベットは、動きたいという意識的欲求が先に起こり、それから脳の運動野が活動をはじめると思っていたが、まったく逆だということを発見した。動こうという決断は、運動野が行動の準備を始めてから約一秒後にやってくる。あなたの脳は、潜在意識のなかで既に動く決断をしており、「あなた」はその動くプロセスが作動したとたん、その存在に気づくにすぎないのである。 この発見が意味するところは途方もなく大きい。何かしようとする意図が、脳がそれをすでにしようと決めてしまったあとにくるとしたら、もし「あなた」が決める前に脳が決めてしまうとしたら、私たちの行動は自由意思ではなく、潜在意識が処理するプロセスに支配されるわけである。「あなた」という感覚(あなたのなかにある個人)は、おそらく、脳が仕掛ける最もみごとなトリックということになる。脳はどういうわけか、意識的な自己が自分の動きを支配しているという幻想をつくりだす。ところが本物の支配権は潜在意識がにぎっているのである。 私たちを操る不気味な生物学的なプロセスが脳のなかにある――アメリカの哲学者ダン・デネットは、それを「自己的自己」と呼ぶ――とは、どうにも心休まらない考えだ。しかし、私たちの意識的思考が無意識的なプロセスからきているなら、その考えは正しいと言わざるをえない。意識は潜在意識の産物なのだ。客観的な脳という点から見ると、意識的にコントロールしているという感覚は、神経生物学的な信用詐欺なのである。こういう考え方は異端のように思われるかもしれないが、実はそれほど異端ではないのではないか。結局のところ、無意識的だろうと意識的だろうと、私たちの思考や行動はすべて脳から出ているのである。意識と無意識は二つの存在(自己と脳)ではなく、統合された全体の部分を成している。それぞれの人生が描く軌跡によって個人化されるとはいえ、「あなた」をつくっているのはすべて脳なのだ。 意識や自由意志が幻想にすぎないとしたら、個人の責任や釈明義務はどうなるのだろう。犯罪はそれを犯した人間の無意識の力から出てきたものだから、彼らにその責任を負わせることはできないということになるのか。ニューヨークのフォーダム大学法学部教授デボラ・デノは、脳についてのこうした見解で困るのは、「心のなかの人格」、すなわち判断を下し、自分の行動に責任を持つ個人という概念を捨てなければならなくなることだと指摘する。しかし、意識的であれ無意識的であれ、私たちの行動すべてがニューロン集合体の伸縮に還元できるならば、そういう私たちの行動がどこまで自由だと言えるだろう?(・・・略・・・) しかし私たちは、神経細胞のネットワークや神経伝達物質や無意識のプロセスについて、さまざまなことがわかったにもかかわらず、やはり、自由に選択する意識的な自己は存在すると思われる。私たちのそうした心のなかの自己を考える能力は、人間の意識の重要な特質をはっきり見せてくれる。つまり、私たちは世界やまわりの出来事を意識するだけでなく、自分自身をも意識する。私たちには自己意識があるのだ。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 『自由は進化する』 ダニエル・C・デネット 山形浩生 NTT出版 ⇒ 「決定論」と「自由意志」(―― は両立する) 訳者解説 P447 デネットはこれを第8章で徹底的に批判する。要するに、意識的な決断が意識に認識されるまでにだってちょっとは時間がかかるんだから、決断より先に行動が起きているように見えるのは、その遅れが検出されているだけじゃないの、ということだ。意識というのは一枚岩じゃなくて、いろんなモジュールが競合しているような存在なんだから、モジュールの間で多少の差が出るのは当然だ。(中略) だからこの話だって、おもしろいけれど自由意志の否定にはならない。
by nbsakurai
| 2006-09-11 21:18
| エリア6 (生物学的発想)
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