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2006年 03月 12日
『限りなく人類に近い隣人が教えてくれたこと』 角川21世紀叢書
ロジャー ファウツ、スティーヴン・タケル ミルズ 高崎 浩幸、高崎 和美 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4047913375/qid%3D1142093395/250-9699341-2348254 内容(「MARC」データベースより) チンパンジーは考え、悩み、言葉をも駆使する。「手話」を使えるチンパンジー・ワショーとのコミュニケーションを通じて、人類とチンパンジーの心と意識の謎に挑んだ、驚きと感動の物語。 P8 「序文」 ジェーン・グルード ゴンベでの私たちの長年の研究で明らかになってきた事実のうち、もっとも人々の興味をひきつけるのは、チンパンジーが人間に似た行動や振舞い――道具使用や道具製作の能力、50年あるいはそれ以上にもおよぶ一生涯にわたって続く親密で互いに支え合う家族の絆、複雑な社会交渉、協力、利他的な行動、慶びや悲しみといった感情の表現――をすることである。今も継続中のワショーとその大家族との会話を通して、チンパンジーは心の中でどのように認識しているのか、というその仕組みを覗く窓を開け、ロジャーはわたしたちの理解にあらたな次元を付け加えてきた。チンパンジーたちが、かつて、わたしたち人間だけにしかない、と考えられていた観念的な恐怖をいだくことがあるのは、今や明白である。チンパンジーは、論理的に推論し、近未来を想定して計画し、簡単な問題を解くことができるだけでなく、コミュニケーションにおいて抽象的な記号を理解し、操作できることを、アメリカ手話語の使用に習熟することで示した。ワショーは、この技能を養子の息子ルーリスに伝えることさえもできた。このように、理知的な面でも感情的な面でも、チンパンジーと人間はきわめて類似している、ということが認識できたのだ。これによってはじめて、人間と他の動物の間に明瞭に存在する、とかつては信じられていた境界が、実は不明瞭なものなのだ、ということが理解されるようになったのである。 [本文] P375 チンパンジーたちとの30年にもおよぶ会話と観察の後で、わたしは以前にもましてチンパンジーの心と人間の心は根源的にそっくりである、と確信するようになった。そしてそれは、チンパンジーの大脳と人間の大脳は両方とも同じ大脳――わたしたちの類人猿共通の祖先の大脳――から進化してきたものなのだ、と考えて始めて辻褄が合う。これらの二種類の大脳の内側に生じる精神の情報処理プロセスは、それぞれの異なった社会生活の必要性に応じて、600万年をかけての適応の結果、それぞれに特殊化をとげてきた。それでもまだ、その二種の大脳は、同じ祖先がもっていた知能から引き継いだものを共有している。 P401 わたしたちの目標に立ちはだかる障害は、類人猿に対する人間の優越性は自明なことである、と多くの人たちが未だに考えて、科学がそれとは反対のことを言うと、何もかも拒絶することだ。 わたしたち人間には魂――もしくは少なくとも「より高度な」魂――がある。神はわたしたち人間を優れたものとしてお創りになった――そう聖書に書かれている。わたしたち人間が惑星地球を支配する――それは、わたしたちがほかのものよりも高度な資質をそなえていることの証拠だ。 これはまさに、女性に対する男性の、黒人に対する白人の、アボリジニに対するヨーロッパ人の優越性を主張するために使われたものと、すべて同じ議論だ。人間の優越性を支持するほとんどの人たちは、その見解が19世紀の人種差別を生み出したのと同じ古めかしい考えから生じていることを認識していない。低級な生命体は、より高級な生命体に奉仕するために存在する、という。この至高に向かう階梯の最上階が、白人男性の優越性から、人間のほかの種すべてに対する優越性と単に置き換えられたにすぎないのだ。 この至高に向かう階梯を発明したギリシャや近東の哲学者は、生命体のあいだに存在する生物学的な系統関係をまったく知らなかった。白人が黒人と近縁関係にあるということや、すべての人間は同一のヒト科の祖先の子孫であって親戚である、ということも知らなかったのだ。その哲学者たちは、チンパンジーが人間と共通の祖先をもつ近縁種なのだ、ということはおろか、チンパンジーの存在さえ知ってはいなかった。自然は互いに無関係の生命体の寄り集まりであるという、太古の錯覚と同じものから、人種差別や人間の優越性という考えは生まれたものだ。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ チンパンジーの研究がここまで進んでいて、その「心」がこれほど人間に近いということが既にわかってきていたとは、ちょっとした驚きでした。 ホモ・サピエンスとどこがどう違うのか、チンパンジーや他の大型類人猿との詳細な比較研究等によって、ヒトのココロの進化の過程や、現在のあり方が、今後さらに明らかにされていくことを期待したいと思います。 それにしても、チンパンジーよりももっと近縁な、アウストラロピテクスや、ホモ・ハビルス、ホモ・エレクトゥスなんかと会話したり、その「心」の研究ができたとしたら、もっといろんなことが解明できるかもしれない。彼らが現在まで生存しておらず、既に絶滅してしまったのは、たいへんに残念な気がします。
by nbsakurai
| 2006-03-12 01:48
| エリア6 (生物学的発想)
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