『人類が知っていることすべての短い歴史』
ビル・ブライソン 楡井 浩一 日本放送出版協会
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140811013/qid%3D1149346657/250-6198529-6987404 「ガリレオの指」はかなり難解な部類の本であったが、この本はその逆で、かなり手軽に楽しく読めるという類の本である。宇宙の起源から人のあり方まで、さまざまな科学の歴史や成果をおもしろく抽出して、科学全般についての堅苦しくない読み物になっている。これで、科学についてのある種の教養を身に付けることができるものと思う。内容的にも、科学の表面をなぞっただけというようなものではない。
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P18
本書は、その過程――とりわけ、全く無の状態から、何ものかが存在するようになり、その何ものかのほんの一部が私たちへと至る過程と、その間の出来事――を記したものだ。それは当然ながら、膨大な事柄を網羅すべき作業であり、だから本書には、A Sort History of Nearly Everything(ほとんどすべてのことに関する短い歴史)という題名がついているが、内容はそれにはほど遠い。”ほとんどすべてのこと”など、語れるわけがない。それでも、うまくいけば、本書を読み終えるころには、それに近い感慨を味わえることだろう。
P21
科学の不思議と精華を、専門的になりすぎず、かといって上っ面をかするだけではないレベルで、理解し、かつ堪能し、大いなる感動を、そしてできれば快楽を、味わうことが果たして可能かどうか、試してみたかったのだ。
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序章によると、以上が本書が書かれた趣旨のようであり、ある意味でそれは私の意図に似ていなくもない。
ただ、できあがったものは、科学の歴史におけるさまざまなエピソードや科学の様々な現状を、次々とできるかぎり平易に興味深いものとして示したものである。確かに、知的なエンターテイメントとして大いに成功しているのではないかと思われるものの、全体の整理とか総合とか秩序とか統一とかからは、かなり遠いという感じのものである。それは読後にかなり混沌とした感触を私に残すもので、全体としてはどちらかと言うと雑学に近いもののように感じられる。科学の現状とはそういうものだということであれば、それはそうにはちがいないのだろうが。
少なくとも私が求めるような世界観というものとは、この本は違った方向のもののようだ。