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2004年 11月 23日
『心の仕組み』――人間関係にどうかかわるか
スティーブン・ピンカー 山下篤子 NHKブックス http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140019727/qid=1101196136/ref=sr_8_xs_ap_i1_xgl/250-8836469-4975463 解 説 長谷川 寿一 (東京大学大学院総合文化研究所教授) (*注:○項目名はnbが便宜補足したものである。) P214 さて、本書の内容について簡単に解説しよう。ピンカーがこの本で示したかった主題は、大きく分けて次の三つである。 ○ 心の計算理論 その第一は、人間の心を計算機として考える点であり、この立場は心の計算理論と呼ばれる。心もコンピュータも外界からの情報を入力し処理するシステムであり、この考え方は1970年代の認知科学革命の基本命題の一つだった。 ○ 心のモジュール論 ただし、ピンカーが第二の点として強調するのは、心の計算処理が、汎用情報処理システムであるコンピュータのそれとは違って、課題の領域ごとに分散して処理されているという点である。認知科学では、心のモジュール論、あるいは領域固有説と呼ばれる立場であり、近年の脳科学や神経心理学が明らかにしてきた認知機能の脳内局在説という知見とも呼応している。たとえば、脳損傷事例からは、顔についてだけ認知できないとか、色名だけが特異的に答えられないといった報告がなされており、fMRIを用いたイメージング研究では、文法処理時にのみ活性化する部位などが知られている。本書でピンカーは、とりわけ立体視という視覚モジュールを題材に、そのメカニズムを詳しく説明している。 ○ 進化的適応によって生じた心 では、このようなモジュール性がなぜ生まれたのだろうか。第三の主題であり、本書をもっとも特徴づけるのが、進化的適応によって生じた心という見解である。生物にとって環境の情報をどれほど適応的に効率良く処理できるかどうかが、生存と繁栄の傾向の鍵を握っている。いち早く天敵を発見し、食物の熟れ具合を査定し、同種のライバルの出方を見抜き、配偶相手の気持ちを察知する――このような問題を効率よく処理できる心を備えた個体が自然淘汰で生き残り、子孫を作ってきた。ここで領域一般的(汎用的)なシステムと領域固有的(状況依存的)なシステムを比較すると、後者のほうが節約的で効率的であることは自明だろう。あり得そうもない、もしもの出来事に備えて、どんな状況にも対処できる(たとえば、いつ天が落ちてきても良いような)汎用の心的計算装置を準備するだけの余裕は先史人にはなかったはずだ。そもそも脳は、体重の2%に過ぎないが、全代謝の約2割を消費する非常に燃費の悪い器官である。自然淘汰で有利だったのは、生存や繁殖にダイレクトにかかわる問題ごとにチューニングされたモジュール的な情報処理だった、とピンカーは強調する。
by nbsakurai
| 2004-11-23 16:59
| エリア6 (生物学的発想)
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